「信州渡来人倶楽部」趣旨文

人類は有史以来、渡来の歴史を繰り返してきました。時には安住の地を求めての渡来があり、時には為政者による強制的な渡来もありました。
 北東アジアの日本と朝鮮半島の間にも、渡来に関して多くの例を見ることが出来ます。古代においては、朝鮮半島から渡来した人々が稲作等の先進技術を伝え、日本の国家建設に貢献したこと。16世紀後半の豊臣秀吉の朝鮮出兵時には、約5万人の陶工をはじめとする技術者が渡来し、文化の融合や発展に偉大な貢献をしたことなど。渡来した朝鮮半島のたくさんの人々によって、この国は大きな影響を受けてきました。
 20世紀に入ると、日本の植民地政策により、強制された人々も含めて約200万人が渡来しました。しかし、太平洋戦争による不幸な歴史がそこには横たわっています。日本の敗戦にともなう解放後、渡来した多くの人々が本国に帰還しました。しかし、戦後の混乱やさまざまな規制などのため、本国に帰ることを断念した数十万人の人々とその子孫が、ここ日本で生きていくことを願い定住し、在日として現在にいたっています。
 かつて朝鮮半島から渡来した人々、現在在日として日本に住む人々は、先輩渡来人の子孫と後輩渡来人の子孫です。もちろん日本人といわれる多くの人々も、かつては渡来人であり、あるいは渡来した人々との間で融合があったはずです。
 私たちはこのような考えをもとに、同じ渡来人としてこの地において協働作業ができないだろうかと考えました。
 現在、北東アジアには困難な状況があります。その根源には、北東アジアに位置する3国(日本・大韓民国・朝鮮民主主義人民共和国)が、互いに不幸な歴史を背負い、その中から偏見や差別、排除の構造をつくりあげてしまった事実があります。そのことを認識しながら、これからの時代にそれらを乗り越える新しい概念をつくりあげようという願いを協働の合意事項としました。私たち個々における歴史認識の不足を補い、北東アジアの総合的な知識と理解を深めるための機会を作り出そうと思い立ったのです。
 そのためには歴史の理解、国際情勢の把握、文化交流などを通じて、新しい世代感覚を最大限に発揮し、ともすれば旧来型の組織で動いてきた北東アジアの関係を、それとは異なる視点で見ることが出来る関係を創って行くことが必要だと考えました。
 そしてその思いを実現するため、日本・大韓民国・朝鮮民主主義人民共和国という北東アジアを形成するトライアングルにルーツを持ち、渡来人としての認識を持つ意欲的な人々によって「信州渡来人倶楽部」が誕生いたしました。「信州渡来人倶楽部」という名称は「TRYする人」という、既成概念や社会構造へのチャレンジの意味も含んでいます。
 私たち「信州渡来人倶楽部」は2004年に発足後、初めての協働作業として記録映画「在日」の上映会を行い、その後、済州島の仮面劇招へいを行いました。今後はもっと楽しくわくわくする勉強会や文化イベントを計画していこうと思っています。ご参加いただくことをお願いするとともに、多くの人の知恵と思いの参加を期待いたしております。
 あなたのご参加をお待ちしています。

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